相続した家の売却|手続きの流れ・期限・税金と空き家の3,000万円控除

更新日 2026/10/09 執筆:売るイエ編集部

相続した家を売るには、名義を相続人に変える相続登記が先に必要です。相続には3か月・10か月・3年といった期限のある手続きが多く、使える税金の特例にも売却の期限があります。期限の一覧から、売却までの流れ、税金、空き家の特例まで順に説明します。

このページの内容

相続と売却に関わる期限

主な期限(起点は相続の開始=亡くなった日、または相続を知った日)
期限手続き
3か月以内相続放棄・限定承認の判断(相続の開始を知った日から)
4か月以内亡くなった人の所得税の準確定申告
10か月以内相続税の申告・納付(相続税がかかる場合)
3年以内相続登記の申請(不動産の相続を知った日から)
相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日まで空き家の3,000万円特別控除を使える売却期限
相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで相続税の取得費加算の特例を使える売却期限

空き家の特例は、亡くなった年から数えて3年目の年末が売却期限です。例えば2025年に相続が始まった場合は2028年12月31日までですが、特例そのものが2027年12月31日までの売却を対象としているため、現時点ではそれより前に売る必要があります(期限が延長されるかは今後の税制改正によります)。売却活動には数か月かかるため、使えそうな特例がある場合は早めに準備を始めます。

相続した家を売るまでの流れ

  1. 遺言書の有無と相続人を確認する
  2. 相続財産と負債を把握し、相続放棄するかを判断する(3か月以内)
  3. 遺産分割協議で、家を誰が相続するか、売却代金をどう分けるかを決める
  4. 相続登記で名義を相続人に変える
  5. 相場を調べ、不動産会社に査定を依頼する
  6. 媒介契約を結んで売却活動をし、売買契約・決済・引き渡しを行う
  7. 売った翌年に確定申告をする(特例を使う場合は必須)

相続登記をする

亡くなった人の名義のままでは売却できないため、相続した人への名義変更(相続登記)を行います。2024年4月1日から相続登記は義務になり、不動産を相続で取得したことを知った日から3年以内に申請する必要があります。遺産分割で取得した場合は、分割の日から3年以内に、その内容にもとづく登記をします。

  • 2024年4月1日より前に相続した不動産で登記していないものも対象で、期限は2027年3月31日です。
  • 正当な理由なく申請しない場合は、10万円以下の過料の対象になります。
  • 遺産分割がまとまらない場合は、自分が相続人であることを申し出る「相続人申告登記」で義務を果たせます。ただし、この申出では売却はできないため、売るときは相続登記が必要です。

相続人が複数いるときの進め方

遺産分割が終わるまで、家は相続人全員の共有の状態です。売るには相続人全員の合意が必要で、1人の判断では家全体を売れません。よく使われる分け方は次の3つです。

相続した家の主な分け方
方法内容注意点
換価分割家を売り、売却代金を相続人で分ける売却価格や時期について全員の合意が必要。代表者の名義で登記して売る方法もある
代償分割1人が家を相続し、ほかの相続人に代償金を払う相続する人に代償金の資金が必要
共有複数人の共有名義で相続する売るときにも全員の合意が必要で、話し合いが長引きやすい

売る予定であれば、遺産分割協議書に「売却して、費用を差し引いた代金を法定相続分などで分ける」と書いておくと、後の手続きが進めやすくなります。話し合いがまとまらない場合は、弁護士や家庭裁判所の調停の利用も検討します。

相続した家を売ったときの税金

相続した家を売って利益が出ると、通常の売却と同じく譲渡所得に所得税・住民税がかかります。相続の場合は、次の2つを亡くなった人から引き継ぎます。

  • 取得費:亡くなった人が買ったときの代金や手数料を取得費にします。相続人が支払った相続登記の費用なども取得費に含められます。
  • 所有期間:亡くなった人が買った時期を引き継ぎます。親が長く持っていた家なら、相続してすぐに売っても長期譲渡所得(税率20.315%)になります。

親が買ったときの契約書が見つからない場合は、売った金額の5%を取得費とする概算取得費を使うことになり、税額が大きく増えることがあります。実家を片付けるときに、購入時の売買契約書や領収書を探しておきましょう。

空き家の3,000万円特別控除

亡くなった人が住んでいた家とその敷地を相続し、要件を満たして売った場合、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。2016年4月1日から2027年12月31日までの売却が対象です。

主な要件

  • 1981年(昭和56年)5月31日以前に建築された家屋であること
  • マンションなど区分所有の建物でないこと
  • 相続の直前に、亡くなった人が1人で住んでいたこと(老人ホームなどに入所していた場合も一定の要件で対象)
  • 相続から売却まで、貸したり住んだり事業に使ったりしていないこと
  • 相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売ること
  • 売却代金が1億円以下であること(ほかの相続人が売った分も合算)
  • 親子・夫婦など特別な関係のある人に売ったものでないこと

耐震改修・取り壊しの要件と2024年からの変更

家屋を売る場合は耐震基準を満たしている必要があり、満たさない場合は耐震改修をするか、家屋を取り壊して土地を売ります。2024年1月1日以後の売却では、売った年の翌年2月15日までに耐震改修または取り壊しを行えばよくなり、買主が工事をする形でも対象になりました。買主が工事をする場合は、期限までに工事が行われなかったときの扱いを売買契約で決めておくと安心です。

相続人が3人以上の場合

2024年1月1日以後の売却で、家屋と敷地を相続した相続人が3人以上いる場合、控除額は1人あたり最高2,000万円です。

相続税の取得費加算の特例

相続税を納めた人が、相続した不動産を相続開始の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日まで(相続開始から3年10か月以内)に売った場合、納めた相続税のうち、売った財産に対応する部分を取得費に加えられます。取得費が増える分、譲渡所得と税額が少なくなります。

空き家の3,000万円特別控除とは同じ財産について重ねて使えません。どちらが有利かは、相続税額や売却益の大きさで変わるため、税理士に試算してもらうと判断しやすくなります。

空き家のまま持ち続ける場合の負担

使わない家でも、固定資産税・都市計画税、火災保険、草刈りや換気などの管理の手間と費用がかかります。管理が不十分で市区町村から「管理不全空家等」や「特定空家等」として勧告を受けると、土地の固定資産税を軽くする住宅用地の特例が外れ、税額が上がることがあります(空家等対策特別措置法、2023年12月施行の改正で管理不全空家等が追加)。

売るか、貸すか、持ち続けるかは、相続人の意向と、特例の期限、管理にかかる負担をあわせて判断します。売る場合は、相場を確認しておくと話し合いが進めやすくなります。

税制は2026年10月時点の国税庁の公表内容にもとづく概要です。計算例は端数処理を省いた目安です。適用要件や期限は改正されることがあるため、申告前に国税庁の最新情報を確認し、必要に応じて税務署や税理士に相談してください。

よくある質問

相続登記をしないまま売ることはできますか?

できません。売却には登記上の名義が売主である必要があるため、先に相続登記をします。相続人申告登記では売却できません。

遺産分割が終わる前に売ることはできますか?

相続人全員が合意すれば売却できます。売却代金の分け方を含めて合意しておき、相続登記を済ませてから売ります。

相続した家を売るといくら税金がかかりますか?

売却益(譲渡所得)に、多くの場合は長期の税率20.315%がかかります。亡くなった人の取得費と所有期間を引き継ぐためです。空き家の3,000万円特別控除や取得費加算の特例を使えると、税額が大きく下がることがあります。

空き家の3,000万円特別控除はマンションでも使えますか?

使えません。対象は区分所有でない建物(戸建てなど)で、1981年5月31日以前に建築されたものです。

相続した家を取り壊してから売ったほうがよいですか?

物件と買主の需要によります。空き家の特例では、取り壊して土地を売る方法も対象です。2024年以降は、買主が売却後に取り壊す形でも対象になったため、建物付きのまま売る選択肢も検討できます。解体費用と売却価格の見込みを比べて判断します。

相続登記の期限を過ぎるとどうなりますか?

正当な理由なく申請しない場合は10万円以下の過料の対象になります。2024年4月1日より前の相続で未登記のものは、2027年3月31日が期限です。

この記事の監修者

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中村亮太宅地建物取引士

宅地建物取引士として10年以上、不動産売却・査定・中古住宅売買などの実務に携わる。不動産市場のデータと現場経験をもとに、売主が判断しやすい正確でわかりやすい情報提供を心がけている。

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